ミンククジラを保護した方が良いのか

近頃、シーシェパードの船長が逮捕されたり、『オーシャンズ』とかいう映画で否定的に描かれたり、オーストラリアから非難されたり、『THE COVE』が話題になったりとかいうのを目にするんだけど。


それで、むかしからの疑問を思い出した。
ミンククジラは増えてるというけど、近代捕鯨の乱獲から個体数が回復してないシロナガスクジラと食性似てるよね。
競合してるんじゃないの?
…ということ。


で、日記書く前にWikipedia見にいったら、やっぱそういう指摘あったのね。

小松正之はかつてミンククジラを「海のゴキブリ」と呼んだが、これはクロミンククジラがより大型の鯨の減少によって生じたニッチの空白を占有したという仮説に基づいて述べたものである。

ミンククジラ - Wikipedia

いったんニッチを占める優先種が入れ替わると、再逆転する事はとても難しい。
イノベーション」がウン十万年単位でおこなわれる生物界では、これはそうとう絶望的状況ではないかと。

Wikipediaには不正確な広報が指摘されてるけど、このあたりの分析はどうなってるのかな?

南極海で主にオキアミを捕食するクロミンククジラと日本近海などで魚類を捕食するミンククジラを混同するなど、事実と異なる広報が成される機会が多い。 ミンククジラの生息数が百万頭というのも、クロミンククジラの下方修正前の生息数76万頭に本種の生息数を合算したものであり、資源量としても無意味なものである。

少なくとも南氷洋ナガスクジラ類とクロミンククジラ類は主にオキアミを捕食するという点で競合しそうだね。
もちろんミンククジラにはシロナガスクジラとかと住み分ける本来のニッチがあったんだろうけど、ナガスクジラ類が激減した後を占める形でニッチを拡張し、しかも――なんていうんだろ――新たなニッチへの適応が無理なくおこなわれている場合、ナガスクジラ類の再繁殖の障害になりうる気がする。

クロミンククジラの生息数については諸説ある。かつては南極海−南半球水域群が76万頭も生息しているのではないかという推計もあったが、近年に出された暫定報告ではこの数字は大幅に下方修正されており、現在、国際捕鯨委員会IWC)の科学委員会で検討が行われているが、2008年の時点で生息数に関する合意は得られていない。

クロミンククジラの商業捕鯨モラトリアム以前の生息数は、ミンククジラの商業捕鯨が比較的最近に始まったこともあって定かでないが、1970年代に初期生息数は20万頭程度と報告されたことがある。

それ以外の群については、IWCの公式ウェブサイトによると、北大西洋については1996-2001年の調査においては推測値が174,000頭で、95パーセントの確率でこの個体群の実数は125,000頭から245,000頭までの範囲の中に含まれるであろうとされている。次に西グリーンランド海域については2005年の調査で推測値が10,800頭(95パーセントの確率で実数は3,600 - 32,400頭の範囲内)とされる。

クロミンククジラ - Wikipedia

こりゃまたえらくばらつきがあるね。調査捕鯨でどんぴしゃと数字が絞り込めないのかね? 政治的に数字が動いたりするのかな?
個体数捕捉には捕鯨より上空から大規模に探査したほうが早くて確実そうだしねぇ。お金がすごくかかるだろうけど。


ところで、JBPressに興味深い記事が載ってた。Economist記事の和訳。

谷口氏はさらに、捕鯨が日本の国際的な立場を傷つけていることに加え、南極海から持ち帰った鯨肉が、日本の数少ない地元捕鯨業者の市場を台無しにしていると指摘した。暗礁に乗り上げたIWCも、同じような解決案を模索する可能性がある。


日本の捕鯨:国際社会の非難に溺れる JBpress(日本ビジネスプレス)

で、この記事では、太地町の沿岸捕鯨を認めさせる代わりに南氷洋から撤退したら、と提案してるんだけど。
ここに出てくる谷口氏の主張は以下で読める。
メディアが伝えぬ日本捕鯨の内幕 税を投じて友人をなくす WEDGE infinity(ウェッジ)


沿岸捕鯨じゃあ『THE COVE』にやられちゃった人とか納得しそうもないし、シーシェパードが遥か南氷洋じゃなくて日本近海でハッスルしてくれちゃうのもイヤなんだけど。


でも方向性としてはアリかもなあ。広報がうまく行けば。
すごく難しそうだけど。
オーストラリアで番組買い取るとか? うーん。



おなじJBPressの記事に示唆に富む一節があった。やっぱりEconomist誌の和訳だけど。
地球温暖化問題に関して:

この3つの疑問には、1つの共通した背景がある。問題は科学自体にあるのではない。政治家が科学を利用して、実際には(科学ではよくあるように)確実性がないことについて、あたかも確実であるかのように示唆してきた、その科学の使い方に問題があるのだ。

気候科学:情報操作と科学と気候変動 JBpress(日本ビジネスプレス)

ちなみに、鯨肉で一番うまいのはニコゴリがたっぷり詰まった鯨大和煮の缶詰だと思う。
あとはむかし小学校で出された竜田揚げくらいしか知らんけど。