ユーロの最大の受益者はドイツ?

ドイツがドイツでいられる理由

 残念なことに、ドイツ国内の議論は誤って、答えはすべてのユーロ導入国がドイツのようになることだと決めてかかっている。だが、ドイツがドイツでいられる、つまり財政規律が取れていて、内需が弱く、巨額の輸出黒字を出す経済国でいられるのは、ひとえに他国がドイツのようではないからだ。

 同国の今の経済モデルは、ドイツの偉大なる哲学者イマヌエル・カントの普遍化可能性の原理に反しているのである。

ドイツの悪夢と化したユーロ圏の危機 - JBpress(2010年3月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ユーロが下がってるね。
ECBの戦略として、ユーロの安値誘導は望むところらしいし結構な事ではないですか。
とかいって(笑)


巨額の黒字を溜め込みながら自国通貨が吊るし上げられないなんて、なんて羨ましいんだろう、ドイツ。
黒字国でありながら通貨調整がEU域外とのバランスだけで決まるんだから。
ギリシャへの緊急融資と平行して進められるEU各国中央銀行の債権買取で失われるのって、EU全体での将来のシニョリッジだけだよね。ドイツのじゃなくて。(ユーロへの信任の低下がどういうコストになるかは未定かもしれないけど)
…とか思ったり。


ドイツにはギリシャなんかの面倒をなんで見なければならないのかという世論が強いらしいけど、こういう見方はドイツ国内にはないのかな?

一連の動きのなかで、ユーロ安はドイツを中心とする欧州が競争政策としてかなり意図的に誘導しているという見方もあるが、それはまったくないとはいえないけれどコントロール不能になるリスクを犯してまでやるようなテーマではないと思う。競争政策的なユーロ安がもたらすリスクは実はもっと深いものがあると思っている。いくらユーロ安になってもそれでメリットを受けるのはユーロ圏以外の国々へ輸出できる物もたくさん持っているドイツやフランスなどだけであり、内にこもっている国々(最近問題になっている国が多い)にとってそれほど恩恵はないだろう。結局ドイツなどの大国がますます力をつける一方で弱小国の競争力やバランスは改善しないから、ユーロの仕組みにこだわる限りドイツなどが自分たちが儲けたお金で救済を続けていくしかない。つまり仕組みにこだわり続ける限り大国と小国の力関係が極めて歴然としたものとなる。その上で財政統一を目指すとなれば国家の従属関係をイメージせざるを得なくなってくる。それは果たして許容できるものだろうか?というのがワタクシの疑問である。ナポレオンやヒトラーの出現を望んでいるのか?ということだ。

金融のロジックと庶民(有権者)のロジック - 厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)


無限に黒字を溜め込む事は不可能である以上、以下の要請も違った面から首肯できるかも:

フランスのラガルド経済財務雇用相は、ドイツの高水準の貿易黒字が他のユーロ圏諸国の競争力を脅かしているとして、ドイツに対して内需拡大を求める考えを示した。15日付の英フィナンシャル・タイムズ紙に掲載されたインタビューで語った。

 同相は、ドイツはユーロ圏の貿易パートナーの輸出を支えるため、内需を喚起すべきだと指摘。「ドイツは明らかに、過去10年あまりの間に大きな成果を上げてきた。競争力を改善し、労働コストを強く抑制してきた。ドイツの単位労働コストを見ると、すばらしい成果を上げてきた」としながらも、「それがユーロ圏全体にとって、長期的に持続可能なモデルであるかどうかははっきりしない。(域内で)収れんを高めることが重要なのは間違いない」と語った。

仏経済財務雇用相、ドイツに内需拡大の必要性訴える=FT | ビジネスニュース | Reuters


5月20日追記:
上記は純粋に想像(純粋な想像=妄想という)で書いたんだけど、同様な意見を見つけたので以下にコピペ。
ギリシャ在住の人らしいので、肌で感じてるのかも:

ユーロが導入されて、ギリシャや他の南欧の国々ではメルセデスBMWなどの車が買いやすくなった。家電製品だって、シーメンス、ミレ、ボッシュなど大半がドイツ製。南欧の国々はドイツにとって最高の顧客となった。

今回のギリシャ危機でのユーロ下落は、産業国のドイツにとっては、大歓迎すべきこと。ギリシャ国債を見捨てても国益への見返りは十分にある。ドイツ企業に勤めていれば、日本人だってそんなことは百も承知。日本国内のメディアに話をする際と、欧州在留邦人ビジネスマンのための経済誌などに寄稿する際、担当者からして温度差があるのはそのためだ。欧州在住でそのからくりをわかっていないビジネスマンなどいないだろう。

しかしメルケルはやりすぎてしまった。何もわからずギリシャ支援反対をを叫ぶ国民の叫びを利用しつつ、国益も過剰に得ようとした。二兎を追うものは一兎をも得ず。州選挙の結果は如実だった。

ギリシャ危機の渦中から〜財政危機はなぜ起こったのか?〜 - 有馬めぐむ - Market Hack(外国株ひろば Version 2.0)