経済学者は「合理的」過ぎる?

経済学の想定する利己的な「経済人」ってのが果たして妥当なモデルなのかというのが「行動経済学」の根っこなんだと思うけど。
行動経済学ってのは実験心理学みたいな心理実験をおこなうらしい。
公共財ゲーム(寄付すると全員に利得がある。誰も寄付しないと全員損するみたいな囚人のジレンマをつかったゲームだったかな)とか。
で、面白いと思ったのが、被験者に経済学者グループを選んで実験したら、他の被験者グループより「利己的」にふるまう度合いが大きかったというもの。

合理的経済人モデルに慣れ親しんでいると、そういう思考様式が身につくのかなあ、なんて。
これは別に実生活で経済学者が皆利己的なんだろとか言いたいわけではなくて、ゲームの場面でそういう思考ができる回路が脳にできてるんだろうということ。
これは、個々の経済学者の倫理規範とはまた別の問題で、もしかすると職業病かなとか思ったりして(笑)
すくなくとも「べき」論とは独立して経済事象を分析する上で必要なビヘイビアなのかもしれない。

ただ水を大量にさすようで申し訳ないけれども、『日本経済復活一番かんたんな方法』を半分まで読んで、ちょっと急停止せざるをえない。飯田パートに展開されている彼の個人的な価値観に正直ついてけない。 例えば実質賃金がデフレで上昇するから駒澤大学はたぶん潰れないのでせこい意味ではデフレは飯田個人では大歓迎とある。正気か? と疑いたくなる。自分の職務として大学生の就職やまた学業の継続の点でもデフレが厳しくのしかかっているのは彼もこの本の中で認めていることだろう 。そのような大学生の窮状はデフレ分析という社会的な立場からの分析であるだろう。と同時に駒澤大学教員という彼個人の職場の環境をも規定するだろう。簡単にいうと日常的にゼミ、会議、講義などの場で学生の窮状ないしその可能性をまのあたりにいする機会があるだろう。 そのような機会ないし機会の可能性の増加に思いをめぐらせれば(いや、当然にめぐらしていると思ったのだが)、駒澤大学教員としてデフレがいいなどとは個人の立場としてもいえるものではないだろう。 彼はこの話を持ち出す前に小飼弾が消費税についての評価で、富裕層の小飼が個人的な利益と社会的な立場をちゃんと区別していると説いている。その区別の是非はどうでもいい(反経済学をふりまいている人物に評価を与えることもないと思うが)。 問題なのは小飼とのアナロジーとして飯田氏が先の駒澤大学教員のデフレ利益を説いていることだ。確かに小飼にとっては消費税が上がっても富裕層の彼には影響ないか事実上得だろう。 しかしこの小飼からのアナロジーを大学教員(つぶれやすい大学とかつぶれにくい大学というのがここでの問題ではない)のわたしたち教員の立場にそのままあてはめることは少なくとも僕にはできない。あまりにも安易すぎる。正直、先を読む気力を失った。

Economics Lovers Live

これ、読んでもないのについコメントしてえらいいきおいで田中先生に怒られたんだけど。
まあ、読んでもないのに想像で感想を書くなんてなんぼなんでも普通はやらないんだけど。
半分しか読んでないで書評されてるんだから、全然読んでないで書いちゃってもいいよね?と、つい。
――ついカッとなってやった、今は反省してる(違)


頭の中にあったのは上の経済学者のビヘイビア。
飯田先生はこのエントリの本のあと『経済は損得で理解しろ! 』なんて本も上梓されてるし*1


一般の経済学では、行動経済学で問題にされる「合理的経済人」モデルを(いろいろ留保は付けつつもだろうけど)とにかく有効なモデルとして受け入れるということになってるんだろう。
しかし、こういう思考様式が身についちゃうと、留保付だったはずの「経済人モデル」を無条件に受け入れてしまって、そこに見出すべき知見を見過ごしてしまうといった陥穽はないんだろうかね?

とはいえ:

だからこそ首をかしげざるを得ない。

なぜ飯田は今なお「古典的な」「マクロ」「経済学」の枠組みに留まっているのかが。守はこれくらいにして、そろそろ破、そして離を見せるべきときではないのか。

...

確かに現実の経済は古典的マクロ経済学だけではまるでわからないが、いきなり量子論や相対論を学ぶより、ニュートン力学から入った方がずっと学びやすいのは確かだ。

404 Blog Not Found:ペア書評 - 行動経済学/経済は損得で理解しろ!

…てのも抽象的過ぎてなんだかよくわからない。
人の事は言えないけど。
行動経済学の、例えば割引率の定式化なんてのは本流の経済学に組み入れて一定の知見を得るところまでいってるのかしらん?
行動経済学量子論に例えるのはかなーり先物買いの悪寒。良く言ってマックス・プランクの量子仮説のレベルではないのかなぁ。

*1:これまた読んでないけど(笑)