そして「アテネの学堂」

そして何よりすごいのが、こういう論文がネットには転がっていて、その気になればおいらみたいな門外漢がアクセスできてしまうという事。

まあ、実際は仕事でしょうがなく調べたんだけど。*1

で、思ったんだけど、これってちょっと頭が良い高校生くらいなら、簡単に調べて実現できてしまうよねぇ。*2
――というのが、今日の二つ目の主題。

で解説しなかったadaBoostは数学的にちょっとややこしい面もあるんだけど、アルゴリズム自体は簡単。
Integral-Imageにいたってはすげー簡単。名前をつけずに発明しちゃってた人が世界中にたくさんいるんじゃないかなというくらい簡単。
論文に出てくる数学記号のいくつかは高校では間違いなく習わないし、英語論文の数学的言い回し(「ここでXXはOO」とか「XXという条件で」とか)も難しい。だけど「数学記号」とか「数学英語」でぐぐれば簡単に調べられる。


そしてViola-Jonesの上記論文は山のような派生論文を生んだけど、確かにあまりにもシンプルすぎて工夫の余地がいっぱいあるんだよね。
OpenCVで採用されてるLienhart & Jochenの論文*3もそうだし。おいらも、仕事でいくつか改良した。(仕事だから書けないけど)


ひところ盛り上がった(炎上した?)"日本のWebは「残念」"を"Tech Mom from Silicon Valley"経由で見た時に最初に思ったのがこの件なんだ。


OpenCVの顔認識をそのまま使ったコンテンツなんかは「ニコニコ動画」にいくつもある
そのまま使ってるとはいえアイディアいっぱい。おいらが調べた4年前にはちょっと考えられなかった状況。


で、こないだ見つけてしまいました。ちゃんと応用&発展させている例:
"Perlでアニメ顔を検出&解析するImager::AnimeFace - デー"
このブログをざっとみたかんじでは論文が何本も書けそうなオリジナルな発展がなされているように思える。
ところがこの人は、趣味でやってるっていうんだよね。


こういう発展がWeb上でまさに行われているということは軽視しちゃいけないんじゃないだろか?



問題は我々の社会のリスペクト力の弱さというか、リスペクトを社会化する力の無さ加減なんではないかと思う。



とりあえず、上の動画の「踊る男」を見てのおいらの感想は、「バカだろこいつ」だな(笑)。
下の動画の解説で「権威づけられる」までは。


日本人ってのはなんでくさすのが得意なのかね?
おいらのまわりだけかしら?
人間の認識機構もろくに判ってない状態で「顔認識」なんてのはかなり「スジが悪い」技術だと思うんだよね。
だからそちら方向の応用を目指すという話が出れば、当然見込みがありそうなのか議論する。
その過程で当然マイナス要因をあげつらう。
それは当然必要な作業だと思う。
問題は「あげつらう」だけで終わっちゃうことだよな。
いったん「あげつらう」と、あげつらった人間を否定せずに話を納める先は「じゃあやらない」という選択肢しか残らないというか。
建設的な議論がそもそも訓練できてないというか。
どうなんだろ?

 英語圏ネット空間は地に着いてそういうところがありますからね。英語圏の空間というのは、学術論文が全部あるというところも含めて、知に関する最高峰の人たちが知をオープン化しているという現実もあるし。途上国援助みたいな文脈で教育コンテンツの充実みたいなのも圧倒的だし。頑張ってプロになって生計を立てるための、学習の高速道路みたいなのもあれば、登竜門を用意する会社もあったり。そういうことが次々起きているわけです。

 SNSの使われ方も全然違うし。もっと人生にとって必要なインフラみたいなものになってるわけ。

――日本のSNSは、人生に必要なインフラになっていない、という意味でしょうか。

 なってないんじゃないんですか? 職を探すとか……。人生のインフラ、学習、生計を立てる、キャリアを構築する、みたいな。

――上に上がるためのインフラにはなっていない、と。

 上に上がるため、自分を高めていくため、という流れがあるかというと、部分的にはあるかもしれないけれど、比較論で言えば英語圏と日本語圏とずいぶん違うと思いますけどね。

――英語圏のそういったあり方が方が好き、という、好き嫌いの問題だということでしょうか。どっちが優劣、といった意識はあるんでしょうか。

 好きだというのはあるよ。人間だからね。ただ、客観的に見て違うよね。ここはどうだろう。そこについて「事実認識が間違っている」という論は立たないんじゃないかな。

――その「違い」に対して、日本のネット空間にはある種、がっかりしたと。

 アメリカにだってダメなところはいっぱいあるけれど。

 ネットはすごくニュートラルなものでしょ。道具だから。上から下まで正規分布みたいになるよね、普通。ニュートラルなものって。

 ニュートラルなものって相対化されるじゃない。いいことから悪いことまで全部出てきて、悪いところは相対化されるじゃない。いいとこもあれば悪いところもあるよね。

 日本のネット空間もそうなんだけど。その比率がずいぶん違う感じがするなあ。


(略)


 ただ、素晴らしい能力の増幅器たるネットが、サブカルチャー領域以外ではほとんど使わない、“上の人”が隠れて表に出てこない、という日本の現実に対して残念だという思いはあります。そういうところは英語圏との違いがものすごく大きく、僕の目にはそこがクローズアップされて見えてしまうんです。

日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編) (1/3) - ITmedia News

*1:といっても4年前の話

*2:おいらは高校(理数科)の物理の課題研究で「逆立ち独楽」の原理をやろうとして、図書館で文献を調べてて出てきた偏微分係数ごときで挫折したけど。習ってないから。当時ネットがあればどうだったかなあ。やっぱだめかな

*3:Rainer Lienhart and Jochen Maydt. An Extended Set of Haar-like Features for Rapid Object Detection. IEEE ICIP 2002.