中国は「買い」?

最大の貿易相手であるユーロ圏の通貨安と消費抑制で、中国も苦しそうだね。
でも外貨準備は膨大だし、国内にはまだまだ物が欲しい層が山のように居るんだから、国内向けに作って売ればいいようなもんだよね。
でも、国民にはまだまだ購買力がない。
購買力ってどこから湧いてくるんだろう?
日銀が言うように「技術革新による力強い成長期待」からかしらん?(笑)

 確かに中国経済を取り巻く外部環境は大きな不確実性をはらんでいる。ギリシャ経済の実質的な破綻はヨーロッパ全域に波及し、先進国経済は金融危機以来の二番底に陥っている。現在、中国にとってEUは最大の貿易相手国になっており、今年の国際貿易は最も厳しい試練にさらされている。

 それを受けて胡錦濤国家主席も談話を発表し、産業構造の転換を図らなければならないと号令した。しかし、産業構造の転換の必要性は言われて久しいが、転換はできていない。内需が拡大しない原因はそれほど単純なものではない。

 これについて今まで指摘されてきた主な原因は、社会保障制度の未整備だった。中国社会の現実を踏まえて考えれば、社会保障制度を整備するには少なくとも20〜30年はかかるものと思われる。言ってみれば、社会保障制度を整備して内需を刺激するという処方箋は「漢方薬」のようなものである。

 最近、中国のエコノミストの間で大きな話題となっているのは、労働分配率(労働報酬の合計÷GDP)の低さである。

 過去10年間、労働分配率は一貫して下落しており、現在わずか40%程度と言われている(日本の労働分配率は60%ぐらいになっている)。実は、この労働分配率の低さこそ、内需を抑える最大の原因と見られている。

 労働分配率を高めるためには、労働組合の集団的交渉権を強化する必要がある。しかし、中国では労働者によるストライキは法的に認められていない。労働者は極めて不利な立場に置かれており、その状況が短期的に改善される見込みはない。

上海万博が終わったら正念場を迎える中国経済 JBpress(日本ビジネスプレス)

中国がバブルに踊らない健全な経済成長を維持するためには、労働分配率を高めて国内の購買力を大きくしていく必要があるよね。
お金持ちは高級品や投資用マンションをいくつも買うかもしれないけど、そのお金で中流世帯が増えたほうがはるかに内需を大きくする。10台の超高級車が売れるより100台の国産大衆車の方が経済効果がでかい。

今の中国共産党プロレタリア独裁な看板を信じてる人間は中国国内にもそうは残ってないだろうけど、政府はスト権をおおっぴらに認めるのは危険だと感じてるだろう。

しかし労働分配率は上げたい。
どうするか?

まずは外資系企業から少しずつ実験的に黙認してみる?

【6月4日 AFP】自動車大手ホンダ(Honda)の中国工場が前週〜今週、賃上げをめぐるストライキで操業を停止した。4日から徐々に稼動を再開する見込みだが、生産ラインが止まるという前例のない事態に、日本企業は中国市場への進出計画を見直す必要に迫られそうだ。

 急成長する経済とともに中国人労働者の賃上げ要求は強まっており、コスト増大に直面する日本企業の頭痛の種となっている。その一方で、中国人労働者の所得が増えれば、高級品需要の高まりが期待できるというとらえ方もある。

■「昇給なし低賃金」に不満、ホンダが前例に?

ホンダから始まる賃上げ要求の流れ、中国工場ストは何を意味するか 国際ニュース : AFPBB News

↑こんなかんじで。

で、すこしずつ観測気球なども上がり始め…

(2010年6月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

中国広東省にあるホンダのトランスミッション工場のストに関する以下の見解を聞いてみてほしい。中国全土でホンダの自動車生産を一斉に停止させたストである。

 最初の見解は次のようなものだ。「今回のストは経営者が労働者に払っている賃金の低さを反映したものだ。現体制は団体交渉を行う法的根拠を与えていない」

 2番目の見解は次のようなものだ。「開放政策が始まってから30年、一般労働者は経済繁栄の分配が最も小さかった集団に属している。ホンダの4工場での生産ライン休止は、中国工場における組織労働者の保護の必要性を浮き彫りにしている」
スト擁護で一致する反体制派と政府系メディア

 最初の発言の主は、韓東方氏。1989年の天安門広場での抗議活動の際、労働者と学生を団結させようとした元鉄道電気技師である。

 韓氏はこの問題で投獄され、刑務所で結核を患い、手術で肺を切除した。今、香港で亡命生活を送る同氏は、労働組合の活動家として働き、中国本土の労働者の権利を監視している。

 2番目のほとんど同じ見解の出所は、もっと意外だ。これは中国共産党機関紙「人民日報」が創刊したタブロイド紙「環球時報」の社説なのである。

権利の主張を認められた中国人労働者 現実にそぐわなくなった低賃金の終焉 JBpress(日本ビジネスプレス)

この流れをうまく制御できるなら、中国投資は依然として「買い」かもね。

一方、日本じゃ慢性的な需給ギャップのもとで(つまり作っても売れない状況下で)車も買えない層が着実に増えてきたんだよねえ。

クルーグマン(5/23補足)

  • レーガン政権時代に新自由主義的な構造改革が実施されるまでは、ニューディール期に導入された規制によって経済に足枷が嵌められていた状態だった、と右派の人々は言う。しかし、家計所得の中位値を見てみると、むしろ戦後からレーガン政権誕生前までは生活水準の向上が見られ、レーガン政権以降は停滞していることが分かる。

サムナー

  • でもレーガン期以降の米国の経済パフォーマンスは、世界の他の国よりも良かったよ。
  • あと、1973年以降の成長率低下については、技術革新の問題が与って大きかったと思う。たとえば1927年にリンドバーグが大西洋を横断した飛行機は小さくて原始的なものだったが、1969年にはボーイングの747が誕生した。それから41年経ったけど、商業用飛行機は747より大して進歩していない。飛行機以外にも似た事例はたくさんある。18〜19世紀の様々な発明が、1920-70年の間の経済成長を生み出したんだ。それに匹敵するような技術革新は当分起こりそうもない――コンピュータ、バイオ、ナノが次の技術革新の波と言われているけど、そこまで大きなものにはならないだろうね。

クルーグマン

  • サムナーの反論はポイントがずれている。僕が言っているのは、強力な組合、高い最低賃金、高い最高限界税率といったものがあっても、高水準の経済成長が成し遂げられた、ということなんだ。右派の連中はそういったものが経済成長には致命的だと主張するが、そのドグマは誤りだと証明したのが先の僕のブログエントリの主旨だ。

レーガノミックスは経済成長をもたらしたか? - himaginaryの日記