日本がビョーキなのは不況のせいだ

ちょっと古いけど、「Tech Mom from Silicon Valley」のエントリに私が書いたコメントから:

(日本がもはや安全な国ではないのではないかというコメントに対して)
Cru 2009/05/08 05:43
日本は、長期的に見て凶悪犯罪が減り続けているのに、人々の不安は増しているという、なんかちょっとビョーキな国になってますね。

(ビョーキなのは国ではなくて日本のマスコミというコメントに対して)
Cru 2009/05/08 08:04
まあ、マスコミが煽るのが原因ではあるんですけどね。
マスコミの商業活動(ニュースを「高値で」売りたい)を非難しても問題の解決にはならんし。

問題はそれに影響されて小学校は門を閉ざすわ、犯罪発生地域でもないのに集団下校させるわ、家の鍵は二重にするわ、自国の安全に自信がなくなるわ…という風景を日常的に見聞きする機会が増えたような。

「ボーリングフォーコロンバイン」に出てたカナダ人達のように家のドアには鍵をかけず泥棒に入られた事を笑い飛ばすくらいにならんもんですかねと。
(ちなみに私も外出時にはしっかり鍵をかけますけどね。怖いから。苦笑)

「日本が、長期的に見て凶悪犯罪が減り続けているのに、人々の不安は増しているという、なんかちょっとビョーキな国になって」いるのは、根源的には「恒常的な不況」のせいだと思う。
まあ、あとひとつあげれば、地域社会の脆弱化。

前者と後者は独立事象ではない気もするけど、まあ、わからんす。

「ボーリングフォーコロンバイン」に出てたカナダ人達が、家のドアには鍵をかけず、泥棒に入られた事を笑い飛ばすことができるのは地域社会への信頼が軸にある気がするし、「長期不況」による「自信喪失」と無縁だった事が大きいと思う。

新型インフルエンザに対する反応が米国と日本で異なるのは「国民気質」も要因としてあるのかもしれないけれど、この「自信」のありようが影響してるような。

ゴールデンリセッション」(バブル崩壊後まもなく)の頃の日本人は今よりずっと楽天的ではなかったかなぁ。*1
ジュリアナで踊り狂ったり、温暖で平坦な海岸の巨大屋内スキー場に足しげく通ったり。*2


不況が失わせるのは『自信』だけではない。「レバレッジ」への志向の減退。「投資」意欲の減退。DRAMサイクルで日の丸半導体が韓国勢等に後塵を拝しつづけ、いまや家電業界自体が沈みつつある理由。
「技術」がないのではない。「自信」がないだけ。
その根本原因は「長期不況」。あんまり長いのでみんな忘れてるだけ。
事の正否を判断する能力も情報もないけれど「リフレ派」に賛同する私の動機は...
以下のid:WATERMAN氏がとても的確に書いてるので引用:

WATERMAN 2010/02/08 00:20
マネーサプライを確実に増やす方法として、政府の財政政策、いわゆる公共事業や減税措置を行う財源として日銀による国債の直接引き受けを行うという方法があり、財金併用型のリフレ政策としてはスタンダードなパッケージです。
これについては法に反するという話もありますが、デフレ不況対策特別法といった名目で時限的に可能にする法を作ればよいのですし、長期的には日銀法改正も含めた法の抜本改正を行えばよい。
まさにスターウォーズヨーダ師が言う「やるか、やらぬかじゃ」であって、既に議論の段階は過ぎているはずです。
問題は、既に失われた10年どころか20年に達しつつあり、これ以上失い続けるならばマクロどころかミクロ構造が壊死・崩壊することになりかねないという瀬戸際に立っているということ。既に先の就職氷河期世代の先頭は40歳近くに達しているわけですが、仮にこの世代を5年程度の訓練で一線に立たすことが可能ならばまだ20年程度は労働力として期待できるのに対し、適切な環境を与えることを放棄するならば分厚い貧困層となる可能性が高いということです。

Baatarismの溜息通信 - 渡辺喜美氏のとってもリフレな国会答弁

「マクロどころかミクロ構造が壊死・崩壊する」、「分厚い貧困層となる可能性」…
このあたりの危機意識を共有できることが大切なんではないかな。
日銀はおいとくとしても(苦笑)政府にもマスコミにも現状では期待できないなら、まずネット世論から。




蛇足:
ところで、日本がビョーキな国になった理由のひとつの仮説として――
ある閾値を越えて犯罪発生率が下がった国は、「安全」に対して過敏になるのかもしれない…というのを提示したい気もする。「命の値段」が上がりすぎた国。分母の犯罪被害率が小さくなれば分子の「不安」が大きくなるという逆説。
もちろんそこには、社会が安全かつ停滞してきて売るニュースがなくなってきたマスコミが、売れるニュースとして開拓してきた社会面ニュース報道の過激化の相乗効果もあるのだと思うけれど。

*1:当時はまだ労働者へのしわよせはなかったからね。だから、消費者を直撃している米国の状況というのは今後予断をゆるさないかも。なんぼ楽天的な気質でもねぇ。ない袖は振れない。米当局がリフレを完遂でき、それが持続的な景気安定につながれば(それによって日本の政策にも影響があってほしいし)良いんですけど。

*2:この辺と似た状況?