マルサスはぬるい件

前エントリで言及したマルサスの『人口論』について:


歴史的に見ると、中国の人口は、常に世界最大級の規模を維持し、周辺世界との人口の流出・流入の比率が少なく、また人口増加と人口崩壊が周期的におとずれたという特徴があるそうな

前漢末期(紀元前後) 約六千五百万人
新(8 A.D−23 A.D)の動乱
後漢初期(25 A.D.) 約二千万人

後漢末(157 A.D.) 戸籍登録人口、五千六百万人
黄巾の乱
魏・呉・蜀合計 戸籍登録人口、一千万人未満

実際の減少はそこまで酷くなかったと推定されるが、西暦3世紀が中国史上、空前絶後の人口崩壊期であったことは確実視されているとかいう話もあるらしい。

以降、人口増加→扶養人口の限界→人口崩壊(王朝の交代)を繰り返し、やがて清朝人口爆発時代に至る。

清代の人口増加

1662年 91,791千人

1852年 439,647千人
太平天国 (1851〜1864)
1870年 357,736千人

太平天国の乱で、ざっと一億の減少。
第二次大戦後、共産中国の「大躍進」時代の2千万人の減少なんてのは、歴史的に見れば「小災厄」程度なのかもしれませんね。

で、マルサスの「人口論」。
”人口は制限されなければ幾何級数的に増加するが生活資源は算術級数的にしか増加しない”(Wikipedia

「人口増加率」という言葉があるくらいで、世代が進むごとに人口はN乗(N>1.0)で増えていくが、食糧増産は、そうはいかない。じりじりと増える食糧供給を人口増加曲線が追い越して、社会不安→戦争・疫病→人口崩壊。緩やかな増加と急激な減少。鋸の歯のように増減を繰り返す人口。中国に限らず、そういう歴史を人類は繰り返してきた。例えば、欧州では14〜15世紀に大きな人口崩壊を経験している。

地域ごとに見れば不安定な人口も、世界全体で見れば確実に増加してきました

世界人口がマルサス的に増えているなら、人口が二倍になるのに要する年数は常に一定のはずです。
ところが…
西暦1600年に 5億だった世界人口が二倍の10億になるのに約200年。
西暦1830年に10億だった世界人口が二倍の20億になるのに約100年。
西暦1930年に20億だった世界人口が二倍の40億になるのに約50年。

これは指数曲線(x=K^t)ではありませんね。
反比例曲線(x=K/(Ct-t))の性質ですね。
t(時間)→Ct(近い将来に予定される破局点)で、x(人口)→∞(無限大)になると。


冒頭のグラフを見てください。まさに反比例曲線。
これで、人口崩壊しないわけがない!


西暦1975年に45億だった世界人口が25年後の2000年に、二倍の80億にはなっていないので、世界の人口"増加率の増加率"は、鈍化してきています。
これは良い兆候でしょうか?
大きな人口増加セクターだった中国の強力な人口抑制策。これは、緩やかな人口崩壊策だという、なかなかうがった見方もあります。
そしてもう一つの大きな人口増加セクター、アフリカ。砂漠化の進行による1970年代以降の慢性的飢餓、そしてエイズの流行で人口増加率が鈍化傾向にあります。その間、各地で紛争も起きていますね。近年公開された映画「ホテル・ルワンダ」の舞台になったルワンダ内戦も人口問題が一つの大きな要因とか。(http://www.worldwatch-japan.org/NEWS/ecoeconomyupdate2003-1.html)

(東アジアは少子化傾向だというのに)世界は既に人口崩壊期の入口に差し掛かっているのかもしれませんね…