外人の顔―その3

“外人の顔 特徴”とかでぐぐってくるひとがわりといるんで書いてみる。


日本人に対する日本人から見た白人の特徴、
黒人に対する黒人から見た白人の特徴、
はそれぞれ異なる。
逆も然り。
だから、日本人と白人の混血は、日本人からは白人っぽく見え、白人からは東洋的に見える*1



3D morphable model face animation

上の動画では個人の顔の平均顔からの3D座標での差分を強調する(0.X倍→1.X倍に増加させる)事で特徴を強調する(カリカチュア化する)ということをやってる。(そのあとで出てくる2D写真から3D顔を作るほうがすげーと思ったけど)
日本人の平均顔とアングロサクソンの平均顔の間でこの操作をすれば、日本人からみたアングロサクソンカリカチュアとかその逆とかを容易に作る出せるだろう。

と、思ってWinMorphを使って2D画像でやって見たのが以下:

0〜2秒目までが通常のモーフィング。それ以降はモーフィングの変位の外挿。つまり「外人の顔の特徴」を極端化したカリカチュア
0秒目は"avarage face"で画像検索して拾った"Average face of 20-year-old Korean females"
2秒目が"caucasian average face"で画像検索して拾った画像をモーフィング。
手作業での入力の誤差が拡大してるのと、顔の表情が違うのが拡大されてるんで、いまいちうまくいってないけど。
眉と目の間が接近してくるのは再現できてるかな?(「なぜ美人は少ないのか」で使った画像でもモーフィングしてみたけど、いまいちはっきり出なかった。はっきりしなかった理由として、日本人女性の平均顔はやや上目遣い、白人の平均顔は、やや顎を上げた画像に見えることがあるような気がする。写真写りを良くしようとして女性がとるポーズの文化的な背景が感じられて興味深い。白人女性にとっては目と眉の間が離れて見えるとか、鼻がちょっと上向きとかは「写真写り」にとって大切な要素なのかもしれないな)


上記の議論には言明されてない仮定が一つある。
それは、この操作で「日本人から見たアングロサクソンカリカチュア」が作られるためには、「日本人」にとっての「普通の顔」と「アングロサクソン」にとっての「普通の顔」は、それぞれ異なり、自民族の顔であるという事。


Haar-like特徴などというある意味簡便な方法で顔を検出できるのは、人々の顔がとても似通っているからだと思う。
Haar-like特徴を使って顔以外の画像、例えば車載カメラの画像からすべての自動車の後ろから見た画像を検出しようとすると、人間の正面顔を検出するよりずっとたくさんのHaar-like特徴を用いる必要が出てくる。
それに対して例えば牛の正面顔を検出するのはずっと簡単な課題になると思う。


だけど、実際に人間が牛の個体識別しようとするときには、牛の顔をつかってやるのはとても難しい。
自動車の後姿から車種を判別するより、それぞれ異なってるはずの牛の顔のほうが特徴のバラつきがずっと小さいから。
ところが我々は人間の顔を易々と区別できる。*2
自動車の後姿から車種を判別するよりはるかに難しい課題であるはずなのに。
まして、人間の遺伝の多様性は、他の野生種よりずっと小さいと言われているのに。
(一方、コンピュータによる顔を使っての個体識別は、「顔認証」という目的に十分答えられるほど信頼できるものにはなっていない、いまだに。)


だから、人の顔で個体識別する能力というのは、人間にもともと顔識別の能力が備わってると考えた方が良いのだろう。自動車の車種判別のような単純なカテゴリ識別能力とは別に。
顔の識別は人間が集団行動への適応という淘汰圧の中で獲得し進化させてきた機能なんじゃなかろうかと。


で、ここからはコンピュータによる顔認識からの類推になるけど。
いや、数学的な特徴空間での顔認識からの帰結というべきか。
既に一度書いてるから詳細は書かない。
個体識別=脳内にモデル化されている平均顔からの乖離の測定。
しかし平均顔は遺伝的には決定されない。
後天的に脳内に形成されるのではないか?
そう考える根拠は二つ。
発生時のホメオボックスの濃度勾配とかアポトーシスなどによる配線で生成するには複雑すぎるであろうことが一点。
後天学習のほうが良い平均顔が獲得できるであろう事がもう一点。


なんか、親の顔に似た顔を持つ異性が好ましく感じられるらしいんだけど。

育児のうまい相手を選ぶには:娘の恋人が父親に似ている理由: 科学に佇む心と体 Pt.1


んで親の顔が好ましいという事ついて上記リンク先で書かれてるのとは別の理由を考えてみた:(既に一度書いてるけど)
平均顔モデルが後天的に脳内に形成されるのだとすると、幼少期に身近で最も多く見る顔は母親の顔。そして家族の顔になるだろう。
そして平均顔が好ましいとするなら、脳内の平均顔モデルに家族の顔が影響してる事が親の顔に似た顔を持つ異性に惹かれる要因になるんではあるまいかと。


ただし外国で長年暮らしてると、平均顔モデルがその国の人々の顔にアダプティブに変更される例もあるようなので、幼少期に獲得された後には変化しないというものではないのかもしれない。


そうなると「親の顔に似た異性に惹かれる原因は脳内平均顔」説はイマイチかもね:)

*1:「日本人」と書かずに「アジア人」と書いてもいいんだけど、おいらには「アジア人」の顔はそれぞれ異なるように感じられるので…。それも「平均顔」が後天的に獲得されているせいで、非日本人のモンゴロイドと日本人との差異が識別出来てしまうせいのような気がする。同様に、白人間では「イタリア人」「ユダヤ人」「フランス人」「ドイツ人」「スラブ系」なんてのがそれなりに区別できるように感じられるんだろう

*2:もしかすると、犬の飼い主はその愛犬を、同一種の別の犬から顔を見ただけで区別できるのかもしれないけど。だとしたらそれも顔で個体識別する能力を使ってるんだと思う。犬飼ったことないから判らん